保護者インタビュー

ADHD保護者体験談

(長男について。)

中学生の時くらいに担任の先生から、 「学校でウィスクサード (WISC-Ⅲ 1) を受けてみませんか」というお話を頂きました。

それまでも小学校高学年の頃から、 担任の先生から「お家で眠れていますか。 授業中、本当に熟睡しています。 起こせないです」みたいな相談というか、 お話を頂いていたことがありまして。

親としては、学校での本人の様子を直接見に行くわけではないので、実際どれくらいなのか、というのを把握できないところもありました。 中学2年生時に、学校が併合され、もともと通っていた学校から大きな学校に通うことになり、移動するにあたって、 「やっぱりテスト(WISC-Ⅲ 1など)を受けられた方が本人にとっていいんじゃないですか」みたいなことを言われました。

知能テストは支援学級の対象には入らなかったので、そのまま通常学級で過ごしました。 お友達はあまりできないんですけど、人の顔と名前が覚えられなくて。それであまりくよくよすることもなく。 体もちょっと弱かったりして。

将来を見据えて、それは親の考えなんですけど、体力がないので、仕事をしなくてはならなくなった時、いわゆる道路工事とか、 そういうところで頑張れないと思って、「資格が取れるような学校に進んだら」と言って、近くの私立高校の福祉科に私が勧めて進学しました。

高校3年間、とっても頑張って通いました。授業中も気絶したように寝たりとか、起きれなかったりとか。 高校には看護師さんとかお医者さんとか専門職の先生が何人もいらして、 専門的な視点から見て「専門医に診てもらわないといけないかもですね」 と言ってくださいました。

まずは内科的なところから色々調べて、調べても調べても、とても健康で。 なぜ眠ってしまうのか、起きれないんだろうか、とか脳波とか24時間のホルター心電図なんかも調べてもらいましたが、 結局、身体的な疾患がありませんでした。

その後、心療内科で簡単なチェックリストみたいなことをやって、「ADHDですね」と診断を受けて、通院を始めました。 お薬が合わなかったりもするので、倒れたり、具合が悪かったりしたので、途中で病院を変えました。

その後もすぐには薬が合わなくて、もう薬はいいかなと思って通院をやめたんですけど、 試験中にも寝てしまうほどで卒業も危ぶまれる状態で、高校の先生が心配して、治療を再開することを勧められました。

通院再開してからは薬が効いて、実習とかもあったんですけど、特別に配慮をもらって勉強の遅れを補習したりしながら、単位を取得していって。

卒業時に、無事に国家試験を受けることができて、今は介護福祉士として働いています。 奨学金の契約をしていた施設で卒業後は3年勤めたんですけど、それも完了しました。

時々は具合が悪くなったりするのを職場の方も理解して下さって、今も辞めないで、続けて同じところで働かせて頂いています。

今、息子に私がしているのが、まあ大人なんですけど、必ず毎朝決まった時間に電話をして、お薬を飲むように伝えています。

休日でもお仕事の日でも。それだけです。あとは特にしてあげることはありません。仕事の悩みとかもあんまりないみたいで。

ただ、やっぱりちょっと気をつけておかないといけないなと感じたのが、車の運転免許のことですけど、 半年に1回警察で特別な面談を受けて更新しなきゃいけないのに、更新手続きを忘れてしまって免許を失効してしまったことがありました。

交通安全センターに行って、手続きを色々してから、やっと免許を更新したというのがありました。 やっぱり注意欠陥というのがありますね。あとは、今は寮に一人暮らししているのですけど、休日の前日には実家に帰ってくるんです。

普段は一人暮らしなので、食事が一人だと不十分なこともあるので、 3日に1度くらいは実家に帰ってきて、色々食べて、また寮に戻って、というのはしていますね。

勤めている3日間くらいは簡単なものを食べているみたいです。 やっぱりそういうのが本当だったら、親元にいて、食べるのもちゃんとした方がいいのかなとも思ったりもするんですけど。

でもね、寮というか、普通のアパートなんですけど、そこで何とかやっていますね。 仕事内容は特別に配慮していただいて、リーダーとかにはならないし、あの子にもできるような業務を見つけてさせてくださっているようです。

本人は「みなさんと同程度のお給料をもらっていて申し訳ない」とか言っています。 でも、それも一つの道を本人が開拓したというか、会社から続けてくれと言われているのもあるので、真面目には働いているのだと思います。

通信制高校体験談

(長女について。)

Q. お子さんが通信制高校に進学されることに至った経緯を教えてください。

中学校までの経緯

長女は小学4年生くらいの時に、 だいぶ病んでいまして、 死んでしまうくらい痩せて、 あばら骨が見える位でした。

最初は「どうにかならないかな」と色々やっていたんですけど、 結局放任しつつ、 「上手くいかないな。どうしようもないな」と考えていたら、 本当に痩せてしまって、 元気も無くなって、 おしゃべりも出来ないし、 閉ざしてしまって。 ただ、お家に閉じこもっているとか、そんなんじゃないんですけど。

「ちょっと悪い感じだよな」と思っている時に、 小学校5~6年生の頃に行方不明になってしまったことがありました。

本人を追い込んでいたのが何なのか、 自分も含め、 学校の先生も、 周りの大人たちには結局何が原因なのかわからなくて。

もちろん、 お友達とか学校の勉強とか、 色々悩み事があったんだとは思うんですけど、 わからなくて、 そうやってこじらせているうちに居なくなってしまって。

先生たちとも 「もう1回探してみて、 いなかったら捜索願を出しましょう」 と言っていた時に、 どこにいたのか分からないんですけど、 ひょっこり出てきました。 それからしばらく学校もお休みしました。

娘はそれまで天真爛漫で、 勉強も普通にできたし、 どちらかと言うと活発で、 というタイプだったんですけど、 急にね、 こんなになってしまって。

疑ってもいなかったんだけど、 WISC-Ⅲ 1 を受けたら、 片方(動作性IQ)が低くて。

言語性IQと動作性IQの差が大きくて。 「まぁ足して割ったら平均です」といった感じで。 ただ、 「本人はこの差で苦しんでいるんだな」と。 もちろん、 具体的な事は別なんだけど、 たどり着いた一つの答えでした。

情緒不安定だったので、 「情緒の支援学級に入れてくれ」と私から学校に頼み込んで入れて頂いて、 そこで良い先生に出会ったんですよ。 温かく面倒をみて下さって。

先生にも 「勉強が出来なくてもいいです。 私が今求めているのはそこではなくて、 とにかく娘が生きていてくれるのが一番なので」 と言いました。

とりあえず、 どうしていいかは分からないんだけど、 とにかく学校には行かせないと、 ずっと学校に行かない子になってしまうと思って。

学校に行かない子にしてしまうのは簡単だったかもしれないんだけど。 「とりあえず行かせよう」と思って、毎日学校に送っていったんです。 でも、毎日2~3時間で帰ってくるんですけど、 それでもいい、 とにかく行かせようと思って。

本当に長い間、そんな感じでした。 もうはっきりは覚えていないんですけど。

でも、娘が好きなこともあって、 音楽と絵を描くことが好きなんです。 学校でも絵を描いていたみたいなんですけど。

で、吹奏楽部に入っていて。 部活の時だけ行くみたいな。 そうしたら、本当にわがままなのに、 「全然部活の時間だけ来てもらってもいいですよ」って 先生が温かく言ってくだいました。 もちろん、それでは出席にはならないんだけど、 本人の学校に行くというのがハードルが低くなるというか。

通信制高校を選んだ理由

早い段階で、中学校で学ばないといけないような内容をほとんどわかっていない状況というのがわかっていたので、 進路については幅広く考えていくつもりがありました。

小学校低学年の漢字が書けないところも出ていた。 本をたくさん読む子で、読める子ではあったんですけど、 書くのは苦手で。

中学校は部活で乗り越えたような感じもありますね。ご飯も食べるようになって。 口を利かないわけではなかったので。特別支援学級の先生とも話をしているようでした。

卒業式も出ることが出来たんです。「みんなの中にいるのがきつい」ということで、離れたところに一人で座って。 でも、逆に大人がいる中を一人で歩いて行ってすごいなと思いましたけど、卒業式に参加出来ました。

「そっちの方がきつくないのかな」と思ったりもしました。 なかには、味方でない人もいたのかもしれませんが、基本的にはみなさん温かく受け入れて下さいました。 逆に、本人や親が苦しい時期には、そういう味方になってくれないような人は避けてもいいかなとも思います。

早い段階で、 普通高校の受験は娘には難しいだろうと気づいて。

長男の進路を考える時に、 通信制高校の情報も集めていたので、 娘には通信制高校なら何とかなるかなと思っていました。

長男が進路を決める時はある通信制高校が開校したばかりで、 卒業生がまだ出ていなかったので、 どうなのかなと思って、 長男の進路選択の中からは外したのもあったんですけど、 娘の時は卒業生もたくさん出ていて。

中3の5月に学校説明会を娘と一緒に聞きに行って、 娘が気に入ったので、進路を通信制高校1本に絞って、 夏ごろには進路が決まっていました。

その頃から勉強もし出しました。 秋くらいから、ネット高校の中学校復習カリキュラムに取り組み出して、 3ヶ月で中学校3年間の勉強を学び直したみたいでした。

通信制高校に進学して、 1年生の終わりに成績も出て、2教科は3だったんですけど、 その他の教科は4か5の評価をもらっていて、 びっくりしました。

通信制高校だから普通高校と違って甘く評価してくれたのかなとか思って、 先生に言ったら「いやいや。普通にできていますよ。かなり上位の成績です」と言ってもらって。

高校2年生のときは大学推薦を勧められました。絵を描くのが好きで、美術系の大学の進学を希望しています。

推薦を勧めて下さった大学は普通の通う大学で、 進学が決まれば転居して一人暮らししながら通学する必要があるんですけど、 娘本人が「それよりは実家に住みながら通信制の大学に行った方が自分にはいいと思う」と言っているので、 今はそこの受験を目指しています。

無事進学が決まれば、後々は家を出て、家から少し離れたところで最寄り駅のあるところで一人暮らしをする練習をしつつ、 1ヶ月スクーリングに行って、画塾に通いながら、というのも考えているみたいです。

家を離れて一人暮らしするには、「片づけられないのがあるので、まずはそこをできるようになりたい」と言っています。

高校では部活にも入っていて、美術部なんですけど、秋から分科部1の部長もしているみたいで。 オンライン上で集まって、同じ系列の中学の中学生に指導をすることもあるみたいです。

学校のプロモーション動画にアニメーションが使われたりしています。 私の職場のパンフレットのデザインを描いてくれたりもします。 人より勉強は遅れていることもあるけど、 出来ているところもあるんですよね。 中学校の頃から絵で賞を取ったりしたこともありました。

Q. 通信制高校に進学して良かったと思われることを教えてください。

通信制高校は娘にとって最後の砦のような感じで思っていたんですけど、 実際は通信制高校に通ったことで色んな世界が広がったように思います。

通信制高校では色んな情報が一斉に送られてくるので、 好きな方向に進んでいける、 選べるというのがすごいなと思います。

職業選択の幅も大きく広がると思います。

Q. 通信制高校に進学して困ったことはありますか。

対人関係を育むのが難しそうというのはあるんですけど、 そこは近所のコンビニでアルバイトをしています。 2年続けていますね。

自動車学校のお金も娘が自分でアルバイトをして支払いました。 最近、「お母さんに苦労を掛けたから」と家具を現金で買ってくれました。

「お父さんにもお礼をしていないから」とピット付の車庫を買ってくれるとも言ってくれたんですが、 相当の額のする車庫を考えてくれていたみたいで。 夫は口を出さず協力をしてくれるタイプの人だったので、 娘も感謝しているみたいです。

「アルバイトをして貯めた貯金で買える」と娘は言ってくれたんですけど、 夫と「さすがに高すぎるからね」と話して、 私に買ってくれた家具並みのお金の車庫にしてもらおうと話しました。

大学に進学しても、今のコンビニのアルバイトは続けるつもりみたいで。 今年の10月から労基法が変わりますでしょ。 それも自分で調べていたみたいで、 「私は扶養から外れるつもりです。 社会保険料は自分で支払います」と言ってきて。

「あなたは学生だから、 そんなに働かなくても大丈夫よ」 とも言ったんですが、 「私は元気に働けるから、 これまで通り働きます。 私が扶養から外れて、 お母さんが何か困ることがありますか?」と言われて、 「困りはしないけど」と。

自分で何でもすぐ調べる姿勢があるのがすごいなと思いますね。 漢字は今も書けないのがあるみたいですが、 自分で調べる力がついている。 漢字が書けなくても全然暮らしていける。

人に劣ることがたくさんありますけど、 楽しいことでカバーしていけるのかなと思います。

Q. 子育てに悩まれている保護者や支援者に伝えたいこと(もしくは悩んでおられる子どもさんに伝えたいこと)はありますか。お母さん自身は子育てに悩んだ時はどうやって苦しい時期を乗り越えられましたか。

悩んだ時期・苦しい時期、伝えたいこと

人数が多い学校に受験をして、 大多数の人が行くような学校に行くのもありかもしれませんが、 逆の進路を進むのもいいかなと思います。 それぞれだと思います。

その子に合った未来を進めばいいかなと思います。 その子の人生だと。

母としての教育方針とは違いますが、 人生を生きていくのは子ども自身だから。 その道を選んで困ることがあってもいいんじゃない? と思います。

その時は、 また違う道を選ぶでしょうから。 本人が納得することが大事だと思います。 母として、 そんな風に思えるようになるまで、 私自身もすごくたくさん勉強もしました。 アドバイスもたくさん聞きに行ったし、 本や雑誌、 ノンフィクションのものも見ることもありました。 同じような立場のお母さんたちが助けてくれたと思います。

具体的に何かをしてくれたというのは思いつかないですけど、 「一人じゃない。 みんなどうにもならないことがある」 と思えたことが大きかったですね。

母として現実はどうにもならないことがある。 それで、 ある日、 「人それぞれでいいんだ」 と思うことに到達しました。 そう思って周りを見ると、 たくさんの人の選択があるな、 解決を急ぐのは結局は遠回りになるなと思うようになりました。 視野を広げてみたらいいなと。

最後の一つだと思って、 目の前の苦難に打ちのめされたとしても、 先を見て、 今日は解決しなくてもたくさんあるな、 それぞれの子に合った未来があるなと思います。

子どもも一人の人間。 娘本人が色んな世界を見れるようになると、 元気になりました。

通信制高校に進学することを決めた時は、 最初はおばあちゃんが猛反対したんです。 「どうして普通高校に行かないんだ」と。 でも、 娘本人が徐々に元気になっていく姿を見てか、 何も言わなくなりました。

今は娘がおばあちゃんのお世話もしてくれます。 同敷地内の家におばあちゃんが一人暮らししているんですけど、 おばあちゃんは身体障害者です。

一日1回は必ず娘がおばあちゃんと食事を摂ってくれるようにしています。 毎日必ず生存確認の意味も込めて。 私が日中は仕事に行っていて、 帰りが遅かったりもして、 娘に頼んでいます。

他の親戚も娘がおばあちゃんと食事を摂ってくれるのを当てにしているのもあります。 おばあちゃんのお世話係みたいな。 小学生の頃はおばあちゃんが娘を見てくれていたけど、今は娘がおばあちゃんのお世話係。

今、当時を振り返って。

私の場合は「そろそろ子育てが終わったな」と思います。 終わったなと思うと、 子育てに苦労したことは今になると忘れてしまいますね。

どうにかしたいと思っていたのが懐かしい。 どう切り開いても行きたい と 思える選択肢をいっぱい出せる という点では 通信制高校に進学したのは良かった と思います。

今の子たちがワクワクしたら良いと思う。 足並みを揃えて、 というよりは、 子どもたちが楽しい と思えることが 見つかった方が良い と思います。

子どもたちは目の前にある狭い世界で悩んでいると思います。 その瞬間、 その世界が大事ではあると思うんですけど、 目の前のことが解決できないこともある。 そんなときは親も視野が狭くなる。 これが嫌だからなくす、 変えるみたいな。

親も視野を広げることが大事かなと思います。 本、 雑誌、 インターネット、 SNS、 周りのお母さんたちと話をする。 何でも調べてみるのが良いと思います。

でも、 気をつけたいのが、 インターネットは 偏った情報が 自分の手元に集まりやすいところがあるので、 そればかりにならないようにしたいなと思います。

便利だけど、 一部だけが切り取られた情報があって偏見に繋がることもあるし。 そういうときは、 本も調べてみると良いと思います。 私自身も気をつけたいと思っています。

  1. WISC-III ・・・発達検査の一種。  2 3 4